トップ / 通好みの巡り方

10 — 巡る

富士山を、
もう一段深く歩く。

五合目からの眺めや河口湖の写真スポットは、大手旅行サイトに任せておけば十分です。ここでは、 本サイトの他のページで紹介してきた噴火の記録・洞窟・信仰の物語を、実際に自分の足で確かめられる スポットとして、少しマイナーめの巡り方でまとめました。

五合目を一周する「御中道」のイメージ

地質を歩く

大室山——樹海の中に眠る、富士山最大の「子分」の火山。

富士山には、本体の山腹から噴出した小規模な火山(側火山、寄生火山)が70基以上確認されています。 その中でも最大級とされるのが、青木ヶ原樹海の中にひっそりとそびえる「大室山(おおむろやま、 標高1,468メートル)」です。整った円錐形をしており、遠目には独立した山のようにも見えますが、 れっきとした富士山の側火山の一つです。樹海の入り口から山頂まで歩けるルートがあり、噴火の 歴史を体感できる、地質好きにはたまらないスポットです。

溶岩樹型を体験する

船津・吉田胎内樹形——木の鋳型の中に、実際に入れる。

「溶岩洞窟」のページで紹介した溶岩樹型のうち、山梨県富士河口湖町の「船津胎内樹形」と富士吉田市の 「吉田胎内樹形」は、内部に人が実際に入って歩ける規模の樹型として整備されており、いずれも富士山 世界文化遺産の構成資産に登録されています。複雑に入り組んだ樹型の内部は、母親の胎内を思わせる 形状であることから「胎内」と呼ばれ、富士講の信者たちにとっては安産や子育ての信仰の対象として 巡拝される聖地でもありました。

健脚向けコース

御中道——五合目付近を巡る、上級者向けの巡礼路。

「御中道(おちゅうどう)」は、富士山の五合目〜六合目付近の等高線に沿って山体をぐるりと一周する、 古くからの巡礼路です。かつては富士講の信者たちが修行の一環として歩いた道で、全周を歩き通す ことは「御中道巡り」と呼ばれ、単なる登頂とは異なる「山を拝む」ための特別な行とされてきました。 現在は一部区間が崩落などにより通行困難な箇所もあり、気軽に一周できるコースではありませんが、 登山口ごとに部分的なトレッキングコースとして歩ける区間が整備されています。

写真好きのための一枚

精進湖の「子抱き富士」——手前の小さな山まで見どころ。

富士五湖の中で最も小さい精進湖から望む富士山は、「子抱き富士(こだきふじ)」と呼ばれる独特の 構図で知られています。富士山の手前に、側火山の一つである小さな大室山が重なって見えることで、 まるで富士山が我が子を抱いているように見える、というのがその名の由来です。単体の富士山の写真 よりも一段複雑なこの構図は、写真愛好家の間で特に人気の高い、玄人好みの一枚とされています。

ダイヤモンド富士・パール富士を狙うなら: 「都市伝説・怪異」のページで紹介した ダイヤモンド富士・パール富士は、田貫湖(たぬきこ)や山中湖など、観測地点と時期の条件が公表・ 予測されている湖畔が定番の撮影地とされています。事前に暦を調べてから訪れるのが、通の楽しみ方です。

信仰の跡を歩く

人穴富士講遺跡——数百基の碑塔群が語る、庶民信仰の熱量。

「溶岩洞窟」「富士講」の両ページで紹介した人穴富士講遺跡は、洞窟そのものだけでなく、周囲に 密集する富士講信者たちの供養塔・記念碑(碑塔群)をあわせて見ることで、江戸時代の庶民信仰の 熱量を肌で感じられる場所です。観光地としての派手さはありませんが、本サイトで紹介してきた 富士山の「信仰の山」としての側面を最も濃く体験できるスポットの一つといえます。

おわりに

見る山から、読む山へ。

日本一の高さ、日本一の知名度を持つ富士山ですが、少し脇道にそれるだけで、火山学、生態学、 江戸庶民の信仰史、そして現役の法律問題まで、驚くほど多層的な物語が広がっています。本サイトが、 次に富士山を訪れる、あるいは眺めるときの、ちょっとした「もう一つの見方」になれば幸いです。

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