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09 — 食

硬い麺と、
豊かな牛乳の理由。

富士山麓の食文化は、火山と湧水という二つの個性がそのまま味に表れています。溶岩台地の水はけの 良さが酪農地帯を育て、コシの強い麺文化を生み、冷たく澄んだ湧水がニジマスやワサビを育てました。 観光地の名物としてだけでなく、「なぜその味になったのか」という理由まで含めて紹介します。

吉田のうどんの丼——硬さこそが個性

山梨側の名物

吉田のうどん——「歯が折れる」と言われるほどの硬さ。

山梨県富士吉田市周辺で古くから食べられてきた「吉田のうどん」は、極太で強いコシを持つことで 知られています。かつてこの地域は農業に加えて機織り(はたおり)業が盛んで、力仕事をする男性 たちが力強く生地をこねられる一方、機織りで忙しい女性たちが手早く用意できる食事として、硬めの 麺と簡素な具材のうどんが定着したと言われています。すりだね(唐辛子とゴマなどを合わせた薬味) をかけて食べるのが定番のスタイルです。

牛肉とキャベツがのった吉田のうどん
吉田のうどん極太麺と強いコシが特徴

静岡側の名物

富士宮やきそば——「蒸し麺を茹でない」異端の製法。

静岡県富士宮市発祥の「富士宮やきそば」は、日本各地のご当地やきそばの中でも屈指の知名度を誇る B級グルメです。最大の特徴は、麺を製麺の過程で一度蒸したあと、通常のやきそばのように茹でるの ではなく、水分を絞って油で表面をコーティングして作る独自の製法にあります。この工程により、 時間が経っても伸びにくい、コシの強いもちもちとした食感が生まれます。仕上げに削り節ではなく 「肉かす」(豚の背脂を揚げたもの)や「だし粉」(鰯の削り節)をふりかけるのも独特の流儀です。

紅生姜が添えられた富士宮やきそば
富士宮やきそば伸びにくいコシの強さが持ち味

湧水が育てる恵み

ワサビとニジマス——冷たく澄んだ水だからこそ。

「自然の恵み」のページで触れた通り、富士山の伏流水は一年を通じて水温が安定しています。この 性質は、水温の変化に敏感なワサビの栽培や、冷水を好むニジマスなどのマス類の養殖に最適な条件を もたらしました。静岡県・山梨県の両県には、湧水を利用したワサビ田やマス類の養殖場が古くから 点在しており、地元の名物料理として提供されています。忍野・山中湖周辺のそば店では、富士山の 伏流水を使って打ったそばを提供する店も多く見られます。

階段状に広がるワサビ田
ワサビ田富士山麓の湧水地帯
葉の上に置かれた新鮮なニジマス
ニジマス冷たい湧水で育つ

酪農地帯という一面

朝霧高原——牧草地に囲まれた、知られざる酪農王国。

静岡県富士宮市の西麓に広がる「朝霧高原」は、富士山と反対側にそびえる毛無山(けなしやま)の 山裾に位置する高原地帯で、実は日本有数の酪農地帯としても知られています。水はけの良い火山性の 土壌と、朝夕に立ちこめる霧、そして富士山の伏流水が育む豊かな牧草が、良質な牛の飼育環境を 支えてきました。観光地としての富士山のイメージからは意外に思われがちですが、地元の牧場や 乳業メーカーが手がけるソフトクリームやチーズは、山麓グルメの中でも根強いファンを持つ「通好み」 の名物です。

富士山を背景に牧草地で草を食む乳牛たち
朝霧高原の牧場と富士山富士宮市西麓

次に読むなら

味わったあとは、実際に麓を歩いてみよう。

本サイトの締めくくりとして、大手旅行サイトがあまり大きく取り上げない、通好みの富士山麓の 巡り方を紹介します。

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