山梨側の名物
山梨県富士吉田市周辺で古くから食べられてきた「吉田のうどん」は、極太で強いコシを持つことで 知られています。かつてこの地域は農業に加えて機織り(はたおり)業が盛んで、力仕事をする男性 たちが力強く生地をこねられる一方、機織りで忙しい女性たちが手早く用意できる食事として、硬めの 麺と簡素な具材のうどんが定着したと言われています。すりだね(唐辛子とゴマなどを合わせた薬味) をかけて食べるのが定番のスタイルです。
静岡側の名物
静岡県富士宮市発祥の「富士宮やきそば」は、日本各地のご当地やきそばの中でも屈指の知名度を誇る B級グルメです。最大の特徴は、麺を製麺の過程で一度蒸したあと、通常のやきそばのように茹でるの ではなく、水分を絞って油で表面をコーティングして作る独自の製法にあります。この工程により、 時間が経っても伸びにくい、コシの強いもちもちとした食感が生まれます。仕上げに削り節ではなく 「肉かす」(豚の背脂を揚げたもの)や「だし粉」(鰯の削り節)をふりかけるのも独特の流儀です。
湧水が育てる恵み
「自然の恵み」のページで触れた通り、富士山の伏流水は一年を通じて水温が安定しています。この 性質は、水温の変化に敏感なワサビの栽培や、冷水を好むニジマスなどのマス類の養殖に最適な条件を もたらしました。静岡県・山梨県の両県には、湧水を利用したワサビ田やマス類の養殖場が古くから 点在しており、地元の名物料理として提供されています。忍野・山中湖周辺のそば店では、富士山の 伏流水を使って打ったそばを提供する店も多く見られます。
酪農地帯という一面
静岡県富士宮市の西麓に広がる「朝霧高原」は、富士山と反対側にそびえる毛無山(けなしやま)の 山裾に位置する高原地帯で、実は日本有数の酪農地帯としても知られています。水はけの良い火山性の 土壌と、朝夕に立ちこめる霧、そして富士山の伏流水が育む豊かな牧草が、良質な牛の飼育環境を 支えてきました。観光地としての富士山のイメージからは意外に思われがちですが、地元の牧場や 乳業メーカーが手がけるソフトクリームやチーズは、山麓グルメの中でも根強いファンを持つ「通好み」 の名物です。