できかたの仕組み
玄武岩質の溶岩は粘り気が少なく、さらさらと川のように流れます。厚みのある溶岩流が斜面を流れ下る とき、外気に触れる表面や側面から先に冷えて固まり、内部にはまだ高温の溶岩が液体のまま流れ続けます。 やがて供給源の噴火が収まると、内部の溶岩だけがそのまま流れ去り、外殻だけが残って中空のトンネルに なる――これが「溶岩洞窟」のできる仕組みです。
富士山麓、特に樹海周辺には、こうしてできた溶岩洞窟が数百カ所確認されており、日本国内でも屈指の 密度を誇ります。多くは貞観大噴火(864年)の際の溶岩流によって形成されたと考えられています。
天然の冷蔵庫
樹海の入り口付近にある「鳴沢氷穴(なるさわひょうけつ)」は、洞窟内の気温が年間を通じて0℃前後に 保たれ、真夏でも壁面や床に氷柱・氷塊が見られる溶岩洞窟です。かつては天然の冷蔵庫として、氷を 切り出して蚕(かいこ)の卵の保存や、氷の貯蔵・販売に実際に利用されていたという歴史があります。
すぐ近くにある「富岳風穴(ふがくふうけつ)」は、鳴沢氷穴よりも規模が大きく、総延長は数百メートルに およびます。こちらもかつて蚕種(さんしゅ、蚕の卵)の貯蔵庫として使われた歴史を持ち、洞内には 当時使われていた貯蔵棚の跡が今も残されています。
信仰と洞窟
静岡県富士宮市にある「人穴(ひとあな)」は、溶岩でできた洞窟でありながら、富士山信仰の中心地の 一つとして特別な意味を持つ場所です。富士講の開祖とされる角行(かくぎょう)は、この洞窟にこもって 厳しい修行を行い、独自の信仰体系を確立したと伝えられています。江戸時代には富士講の信者たちの 巡礼地となり、洞窟の周囲には信者たちが建立した数百基もの供養塔・記念碑(碑塔群)が今も密集して 残っています。
この歴史的価値が認められ、「人穴富士講遺跡」として、富士山世界文化遺産の25の構成資産の一つに 正式に登録されています。単なる自然地形としての洞窟ではなく、江戸庶民の信仰の実態を伝える貴重な 史跡として評価されている点が、他の風穴・氷穴とは異なる人穴の特徴です。角行や富士講についての 詳しい物語は、「富士講」のページで扱います。
生態系の視点
樹海の中にある「西湖コウモリ穴」は、総延长(総延長)が日本の溶岩洞窟の中でも屈指の規模を誇り、 キクガシラコウモリやモモジロコウモリなど複数種のコウモリが越冬・繁殖する、国内でも有数の コウモリの生息地として知られています。一部区間はガイドツアー形式で見学が可能で、溶岩地形と 生態系の両方を間近で観察できる、玄人向けのスポットとして愛好家に親しまれています。
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人穴で修行した角行から始まり、江戸で爆発的なブームとなった富士山信仰「富士講」。その全体像を 次のページでたどります。
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