誕生の経緯
「噴火の歴史」のページで触れた通り、青木ヶ原樹海の土台は864年の貞観大噴火で流れ出した溶岩流です。 当時この一帯には「剗(せの)の海」と呼ばれる広大な湖が広がっていましたが、大量の溶岩が流れ込んで 湖を埋め立て、湖は分断されて現在の精進湖と西湖になったと伝えられています。溶岩に覆われた台地の上に、 千年以上かけて再生してきた自然林が、現在の樹海です。
面積はおよそ30平方キロメートルにおよび、東京の山手線内側の面積の半分近くに相当する広さがあります。 地表のすぐ下が溶岩層であるため土壌が非常に薄く、木々は地表に露出した溶岩の上に根を張り巡らせながら 成長します。根が地表を這うように絡み合う独特の景観は、この「土がほとんどない」という特殊な地質 条件から生まれたものです。
よく聞く噂・その1
樹海にまつわる噂で最もよく語られるのが「方位磁石が狂って使えない」というものです。この噂には 一定の根拠があります。樹海の地表を覆う溶岩には鉄分(磁鉄鉱)が含まれており、方位磁石を地面や 溶岩の岩肌に直接近づけると、磁針がわずかに影響を受けることが実際に確認されています。NHKの 「ブラタモリ」など複数の番組・検証記事でも、この現象自体は再現されています。
よく聞く噂・その2
磁石の噂とセットで語られるのが、電波にまつわる噂です。かつては樹海の奥深くで携帯電話の電波が 届きにくいエリアが実際に多くありましたが、これは磁鉄鉱の影響というより、単純に山間部・森林部で 基地局からの電波が届きにくいという、日本の山岳地帯に共通する事情によるものです。近年は基地局の 整備が進み、状況は変化してきています。
GPS(衛星測位)についても、上空の開けた見通しが確保できれば衛星からの電波は受信でき、樹海だから 特別にGPSが使えなくなる、という科学的根拠は確認されていません。ただし密な樹冠に覆われた場所では 衛星電波が遮られ、通常の森林と同程度に測位精度が落ちることはあります。
生態系という視点
樹海は単なる「不気味な森」ではなく、独自の生態系を育む場所でもあります。樹海には溶岩がつくった 無数の洞窟が点在し、その一部はキクガシラコウモリなどのコウモリ類の貴重な越冬地・繁殖地となって います。また樹海と周辺の湖沼をあわせた一帯は、富士五湖の景観の一部として国の名勝や天然記念物の 指定を受けているエリアも含まれ、学術調査の対象地としても位置づけられています。
樹海の中央部には「西湖コウモリ穴」のように観光利用されている洞窟もあり、溶岩地形と生態系が セットで観察できる場所として、地質・生物の両面から研究者や愛好家に注目されてきました。
次に読むなら
樹海の地下には、溶岩が流れた跡にできた洞窟のネットワークが広がっています。風穴・氷穴と呼ばれる それらの地形を、次のページでたどります。
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